弾性波トモグラフィー解析技術

弾性波トモグラフィーについて

■ より速く正確に地下の速度分布情報を得る。

従来の「屈折法探査の実測データ」と「コンピュータアルゴリズムによるデータ解析技術」を融合し、より速く正確に地下構造を把握する事を可能にしたのが弾性波トモグラフィー技術です。

地層境界を斜めに入射した波はその地層境界を伝わる性質があります。この性質は屈折と呼ばれますが、屈折した波を用いて地下の速度分布を知る調査法を屈折法探査と呼びます。屈折法探査は土木分野の調査において従来多く実施されてきました。

屈折法探査では、起震車やダイナマイトで人工的に発生した微小な地震波を地表に設置した多数の地震計で受震します。この時得られた地震波形記録から、地震波が最初に到達した時刻を読取ります。これが初動走時の観測記録になります。

従来の屈折法探査の解析ではこの初動走時を距離に対してプロットした走時曲線図をもとに、萩原の解析法もしくはその拡張解析法(通称、はぎ取り法)と呼ばれる図式的な方法を用いてきました。その際、速度層をいくつか仮定して行っています。しかし、このような速度層分けは解析の途中段階で入り込むため、実際の地盤に対して解析者の主観的な解釈が入り込んでしまいます。

■ 波線の通過情報を用いて速度分布を推定する。

弾性波トモグラフィーでは速度層の仮定を用いず、下の図に示すように波線の通過情報を用いて速度分布を推定します。解析はすべて計算機を用い、計算走時が観測走時にあうようにモデルを変化させて収束計算を行います。このため、従来の屈折法探査にあるような解析者の主観が入ることなく客観的な解析が行われます。また、弾性波トモグラフィーでは波線の通過状況により、より詳細な地下の速度分布情報を得ることが出来ます。

弾性波トモグラフィー解析の手順 概念図

仮定した初期モデルにおいて、起振点から受振点までの走時(到達時間)を波の伝播経路を基に計算し、観測走時と理論(計算)走時が合うまで繰り返し演算を行う。

観測走時と理論走時の比較図(弾性波トモグラフィー)

観測走時曲線と理論走時曲線がほとんど同じになった修正モデルをP波速度分布構造として求める。

屈折法探査のトモグラフィー解析の事例

■ 京都盆地を横断して行なわれた「屈折法探査」+「弾性波トモグラフィー解析」

次の例は実際の屈折法探査において弾性波トモグラフィー解析を実施した結果を示します。京都盆地を東西に横切る久世橋通り沿いに屈折法探査を行い得られた記録から、読み取った初動走時観測値のグラフが上図の赤い曲線群です。P波の速度分布を修正しながら最終的に収束した時の理論走時曲線は青い曲線群です。
最終的に得られたP波の速度分布が下の図になります。この図からP波速度値が急に大きくなる所は、同一側線上での反射法探査によって得られた基盤岩面とよく一致すること、基盤岩内部でも速度値の大小があることなどが分かります。この結果は京都盆地の3Dモデリングのデータの一部として用いられました。

久世橋P波屈折探査での弾性波トモグラフィーの事例
(出典: 京都盆地の地下構造 京都市 平成15年)

VSP探査との組み合わせによる解析の事例

■ 弾性波トモグラフィー解析の高い測定自由度を利用する。

下の例は通常の屈折法探査で行われる地表起震+地表受震のデータとあわせて、測線内に掘られた2本のボーリング孔を用い地表起震+孔中受震(VSP探査)のデータもあわせて解析した結果です。弾性波トモグラフィーではこのように測定の自由度が高く、目的に応じて効果的な調査を行うことが可能です。

弾性波トモグラフィーによる解析結果